- メーカーの設計職がCopilotに渡した7つの業務と、実際の指示文
- それぞれ、何がどう変わったか(ビフォーアフター)
- 次にAIへ渡ると考えている仕事と、それでも人間に残る仕事
会社にCopilotが入ったものの、正直あまり使っていない。まわりを見ていると、そういう人のほうが多いと思います。何に使えばいいのかが、そもそもわからないからです。
私はメーカーで設計をしています。この2年、自分の仕事をどこまでCopilotに渡せるかを試してきました。結果として、週報・会議の設定・議事録・資料探し・報告書・英文メール・設計検討の下調べが、私の手元から消えました。
使っているのは会社から配られた社内向けのCopilotだけです。特別なツールは何ひとつ契約していません。
この記事では、その7つを実際の指示文つきで書きます。先に結論を書いておくと、AIにできない仕事は、ほぼなくなりました。残っているのは、最後に何を採用するかを決めることと、現物を触ることくらいです。
ラミうちにも入ったけど、正直あんまり使ってないかも



渡せる仕事、思ってるよりずっと多いよ。
メーカー設計職のCopilot環境
最初に前提を共有します。環境が違うと事例が参考にならないからです。
私が業務で使っているのは、社内向けに導入されたMicrosoftのCopilotです。プレミアムプランで、エージェント機能も使えます。自分で特別なツールを契約しているわけではなく、会社から配られたものだけでここまでできる、という点は先に書いておきます。
転機になったのはエージェント機能です。それまでの「聞いたら答えてくれる」から、「決めた時間に、決めた作業を勝手にやっておいてくれる」に変わりました。渡せる範囲が一段広がったのはここからです。
では、実際に何をどう渡したのか。7つを順に見ていきます。
業務別|Copilotに渡した7つの仕事
先に全体像を一覧にします。この記事は基本的に、この表を1行ずつ説明していく構成です。
| 業務 | これまで | 今 |
|---|---|---|
| 週報 | 金曜に15分、1週間を思い出しながら書く | エージェントが定時前に自動で作成 |
| 会議の設定 | 参加者の予定を見比べ、会議室を押さえる | 日程調整も会議室の予約も自動 |
| 議事録 | 会議のたびに自分でまとめ直す | 要約・結論・次アクションまで自動で発行 |
| 資料・事例探し | 1つ探すのに1時間かかることもあった | 社内フォルダを横断して数十秒 |
| 報告書・提案資料 | 白紙の資料を自分で組み立てる | たたき台を作らせ、直しを数回繰り返す |
| 英文メール・海外対応 | 英語で手が止まり、作業が中断する | 止まる時間そのものが消えた |
| 設計検討 | 過去事例を自分で掘り起こして比較 | 事例収集と案出しまで任せ、採用は自分で決める |
週報:金曜の定時前に自動で完成
| これまで | 今 |
|---|---|
| 金曜の夕方に、1週間を思い出しながら書く | エージェントが定時前に自動で作成 |
| 自分の作業時間:週15分 | 自分の作業時間:ほぼ0分(目を通すだけ) |
| 書く内容は記憶に頼る | 予定・メモ・会議の記録から事実を拾う |
指示は一度出しておくだけです。あとは毎週、勝手に走ります。Outlookの予定、OneNoteのメモ、会議の記録から、一週間の活動内容をまとめて、勝手に週報が作成されるようになりました。
実際の指示は、この程度で通ります。
毎週金曜の17時までに、今週の週報を作成してください。Outlookの予定、OneNoteのメモ、会議の記録から実績を拾ってまとめてください。
副産物もありました。自分で書いていた頃の週報には、どうしても脚色が入っていました。うまくいかなかった週ほど言葉を選び、頑張った週は少し盛ってしまう。AIは事実だけを拾って組み立てるので、読む側にとってはそのほうが正確です。
社内では「AIに書かせるのは失礼では」という声もあります。ですが週報の目的は、今週何が起きたかを、正確に、早く共有することです。目的から見れば、事実を漏れなく拾って定時前に出てくるほうが優れています。
会議設定:日程も会議室も自動で決まる
| これまで | 今 |
|---|---|
| 関係者の予定を1人ずつ見比べて空きを探す | AIがOutlookを見て日程を調整する |
| 空いている会議室を自分で探して押さえる | 空いている会議室の予約まで済ませてくれる |
| 1回あたり数十分溶けることもあった | 私は何もしていない |
これまで地味に時間を取られていた会議設定が一瞬で終わるようになりました。



出席者が多いと時間調整も一苦労だったもんね



今ではAIが一瞬でやってくれるよ
〇〇さん、△△さんと私の予定を見て、来週前半で1時間空いている枠を3つ挙げてください。あわせて、その時間に空いている会議室を予約してください。
派手さはありませんが、毎回発生する小さい面倒がゼロになる効果は、実際に働いていると想像よりずっと大きいです。
議事録:作成も、あとで探すのも不要に
| これまで | 今 |
|---|---|
| 会議終わりにPCをカタカタしながら15分ほどで書いて、場合によっては上長承認のうえで発行 | AIが議論の要約・結論・ネクストアクションまで整理された記録を自動で発行 |
| 過去のメールを追って「どんな会議だったか」を思い出す | 聞けば過去の議事録から流れごと要約が返ってくる |
呼び出すときの言い方はこれだけです。
〇〇案件について、これまでの会議の議事録から経緯と決定事項、まだ決まっていない論点をまとめてください。
以前は、過去のメールを追いかけて「どんな話をした会議だったか」を思い出す作業がありました。今はAIに聞けば、これまでの流れごと要約が返ってきます。複数の案件を並行していてどこまで進んでいたか思い出せない、別件が入って会議に出られず話が飛ぶ。こういうことが、ほぼなくなりました。



複数の案件を回していると思い出すのも一苦労だった



今ではAIがこれまでの経緯を数秒でまとめてくれるよ
資料探し:1時間が数十秒になった
| これまで | 今 |
|---|---|
| 記憶を頼りに探す | 社内フォルダを横断してAIが探してくる |
| 1つ探すのに1時間かかることもあった | 数十秒 |
| どこにあるかを覚えている必要があった | あるかどうかを聞けばいい |
仕事をする上で、調べ物の時間って無駄だとわかっているけど、これまでかなりの時間を取られていました。
規格、過去の不具合報告、他社の事例、社内の類似案件。1つの資料を探すのに1時間かかったことも普通にありました。自部署が持っていない資料は他部署の人にフォルダの在処を聞いたり、、、色々と面倒でした。
今はCopilotが社内のフォルダを横断して探してきてくれます。
どこにあるかを覚えている必要すらなくなりました。
探すときはこう聞きます。
〇〇の規格について、社内で過去に作成された資料を探してください。関連する不具合報告があれば、それも含めてください。
報告書:たたき台を作らせて直す
| これまで | 今 |
|---|---|
| 白紙の状態から自分で組み立てる | たたき台を作らせ、そこから直す |
| 構成を考えるのに時間がかかる | 構成は出てきたものを直すだけ |
報告書や提案資料も、白紙から組み立てることはなくなりました。まずたたき台を作らせて、そこから直しを何回か回す。ゼロから書くより、直すほうが速いというだけの話ですが、効果は大きいです。
たたき台を作らせるときの指示です。
添付の検討結果をもとに、社内報告用のスライドを作ってください。構成は、背景・検討内容・結果・今後の課題の4つでお願いします。
新入社員向けの資料なのでフレッシュな色合い、社内用語は少なめで。
英文メール:止まる時間が消えた
| これまで | 今 |
|---|---|
| 英語で手が止まり、作業がそこで中断する | 止まる時間そのものが消えた |
| 言い回しで悩む | トーンを指定して出させる |
海外拠点やサプライヤとのやり取りで、英語のせいで手が止まる時間がありました。この時間がまるごと消えました。作業が英語で中断しなくなった、というだけですが、1日の中で細かく効いてきます。
指示はこれで十分です。
以下の内容を、サプライヤ向けの英文メールにしてください。丁寧すぎない、実務的なトーンでお願いします。
設計検討:判断材料集めまで任せる
| これまで | 今 |
|---|---|
| 過去の事例と社内の類似案件を自分で掘り起こす | 収集とまとめまでAIに任せる |
| 案の比較も自分で組み立てる | AIが案を出し、メリットとデメリットを整理する |
| 下調べと比較検討に数日かかっていた | その日のうちに材料が揃う |
| どれを採用するかを自分で決める | どれを採用するかを自分で決める(変わらない) |
今は、過去の事例と社内の類似案件を全部引っ張ってきて、まとめさせるところまで任せています。さらに、そのまとめをもとにAI自身に案を考えさせるところまでできます。ここまでで、自分一人なら数日かかっていた下調べと比較検討が数秒で終わります。
実際の指示はこうです。
〇〇の構造について、社内の類似案件と過去の不具合事例を集めてまとめてください。そのうえで考えられる案を3つ挙げ、それぞれのメリットとデメリットをQCTで整理してください。
ただし、最終的にどれを採用するかは自分で決めなければいけません。コストと強度と納期のどれを妥協するのか。その選択に責任を持つのは誰か。AIは選択肢を並べるところまでは完璧ですが、決めた結果を引き受けることはできません。
これからAIに渡ると思う3つの仕事
ここからは予測です。ただし、遠い未来の話ではありません。技術的にはもう見えていて、あとは社内に入ってくるかどうか、という段階のものを挙げます。
部品レイアウトは最適化で一瞬になる
いま設計でいちばん時間を食っているのが、部品と部品のレイアウトと干渉の確認です。
現状のやり方はこうです。まず情報を集める。QCD(品質・コスト・納期)を見ながら、他の部品との兼ね合いを確認する。関係者と議論して、行ったり戻ったりしながら少しずつ位置を決めていく。各部品の担当同士で陣取り合戦のようなことが起きるので、部品点数が多い製品ほど、レイアウトを決めるのは本当に大変です。
ただ、これはAIを使えば、条件を入れれば最適解を出せる種類の問題でもあります。制約を全部書き出してAIに渡せば、最適化したレイアウトが一瞬で出てくる。そういう日は、そう遠くないと思っています。
CAD図面はAIが引き、人が直す
図面を引く作業も同じです。うちの会社では導入されていませんが、すでにCADもAIが動かせる時代に既になっています。
条件を入れればAIが図面を作り、人間の仕事は確認して修正することだけになる。そして、その確認と修正すら、いずれなくなるかもしれません。
多言語会議はその場で翻訳される
いろいろな国の人とやり取りをしていると、当然のように全員が英語で話します。ですが誰にとっても母国語ではないので、「本当に伝わったのだろうか」という不安が毎回少し残ります。
社外にはAIによるその場翻訳がすでに普通にあります。そのうち会社にも導入されると思っていて、そうなればこの不安ごとなくなります。
全部の仕事を一度Copilotでやってみる
ここまでの事例を踏まえて、いま私がいちばん言いたいのはこれです。すべての仕事を、一度AIでやってみてください。本当にすべてです。
「これはAIを使う仕事じゃない」「これをAIにやらせたら失礼だ」。そういう線引きを一度まるごと外して、これもAIでできないかな、あれもできないかなと考える順番に切り替える。できない部分だけ自分で拾う。この順番が逆のままだと、いつまでも手作業が残ります。
任せた回数だけ渡せる範囲が広がる
私自身、2年前に渡せると思っていた範囲と今の範囲はまったく違います。それはAIの性能向上もあるのですが、AIと会話しているうちにどんどん任せられる仕事が多くなってきました。
若手でもベテランに並べる理由
これまで、ベテランと若手の差の多くは「知っていること」と「段取りの慣れ」でした。どの規格を見ればいいか、誰に聞けばいいか、どういう順番で進めるか。その差は、AIでかなりの部分が埋まります。使いこなせるなら、若手がベテランと同じくらいのパフォーマンスを出すことも不可能ではありません。
ただし条件があって、使いこなせるなら、の部分です。これは経験年数ではなく、単純に触った量で決まります。



経験が浅くても戦えるってこと?



AIによって経験の差は埋まると思うよ
逆に言うと、いまの職場でAIに触る機会そのものが与えられていないなら、それは環境側の問題です。数年後にいちばん差がつくのはそこなので、転職を含めて選択肢は持っておいたほうがいいと思います。
AIに任せられない仕事は残るのか
レイアウトも図面も渡すとなると、設計者に何が残るのか。ここを順番に考えます。
仕事は「条件を入れて確認する」に変わる
まず起きるのは、作業そのものではなく、作業の前後だけが仕事になるという変化です。
レイアウトも図面も、AIに渡すには制約条件を書き出す必要があります。何を優先し、何を犠牲にしていいのか。どの規格を満たす必要があるのか。条件を正しく言語化できる人だけが、AIをまともに使えます。そして出てきたものを見て、おかしい部分を見つけて直す。
つまり設計は「手を動かす仕事」から「条件を決めて、結果を検証する仕事」に変わります。ここまでは、まだ人間の役割が明確に残っています。
最後に採用を決めるのは人間のまま
では、その先はどうか。条件を入れるのも、出てきたものを検証するのも、いずれAI同士でやれてしまうかもしれません。それでも最後に残るのがどれを採用するかを決めることです。
コストを取るか、強度を取るか、納期を取るか。正解がある問題ばかりではないので、選んだ結果を引き受ける人がいて初めて決まる問題です。AIは選択肢を並べ、根拠を示すところまでは完璧にやります。ですが、その決定の責任を負うことはできません。
この2年でいちばんはっきりしたのは、設計とは図面を描く仕事ではなく、責任を持って決める仕事だったということでした。
現物を触る仕事も数年で置き換わる
もう1つ残っているのが、現物を触る仕事です。実機を組んで動かす、試験機にかける、現場で音を聞いて異常を判断する。ここはまだ完全に人間の担当です。
ただ、これも長くはないと思っています。フィジカルAI(ロボットが実世界で動く方向のAI)のニュースの出方を見ていると、数年で大部分が置き換わる気配があります。
そうなると、これまで会社員が「仕事」だと思ってきたものは、決めること以外ほぼ全部なくなります。脅しではなく、もうそうなることが見えてきているってことです。
やりたいことが仕事になる
仕事と趣味の違いは何か。やっていることの中身では区別がつきません。プラモデルを組む人と、工場で組立をする人。文章を書く人と、記事を書いて生活している人。違いは1つだけで、お金がもらえるかどうかです。
そこで、「やりたいかどうか」と「お金になるかどうか」の2軸で並べてみます。
いま「仕事」と呼ばれているものの多くは、「やりたくない × お金になる」のマスにあります。やりたいわけではないが、お金になるからやる。このマスを、AIがまるごと引き取ります。効率だけで測るなら、人間が残る理由がないからです。
そうなると、人間に残るのは「やりたい × お金になる」のマスだけになります。そして、そこに入ってくるのが「やりたい × お金にならない」だったもの、つまり趣味です。やりたいことをやってお金をもらう時代が来るんじゃないかと思っています。



好きなことして生きていいってこと?



そう聞こえるけど、条件が1つあるよ。
条件は、自分が何をやりたいのかを知っていることです。ここまでは、やりたいかどうかを考える必要がありませんでした。お金になることをやればよかったからです。その前提が外れたとき、いちばん困るのは「別にやりたいことなんてない」という状態のほうです。
まとめ|明日から試す順番
長くなったので整理します。
- 会社から配られたMicrosoft Copilotだけで、週報・会議設定・議事録・資料探し・報告書・英文メール・設計検討の7つを渡せた
- 次に渡ると思っているのはレイアウト最適化・CAD図面・多言語会議の翻訳
- 1回目は外れるのが普通。やり直すほど出力は良くなる
- 設計は「手を動かす仕事」から「条件を決めて結果を検証する仕事」に変わる
- 最後まで残るのはどれを採用するかを決めること。現物を触る仕事も数年で置き換わる
最初に試すなら、週報がいちばん手ごろです。毎週必ず発生して、締切がはっきりしていて、失敗しても被害が小さい。エージェントに曜日と時間を指定して、あとは出てきたものを直すだけです。
慣れてきたら、会議の設定と議事録に広げてください。毎回発生する仕事から渡すほど、効果が積み上がります。

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